[A clinico-histological study on the hypersensitivity of dentin].

要 旨:象 牙質知覚過敏症 は,日 常 の臨床 で しば し ば遭 遇す る 疾患で あ り,し かもそ の病理 な らび に処置法はま だ 十分 に 明 らか にされ ていない為,著 者は,知 覚過敏症の本態 を知 り,同 時 に適確 な 処 置法 を知 る目的で,そ の特徴的症状(自 発痛 の欠如 と誘 発痛の持続 性が短い こ と)を 中心 に臨床的 ならび に組織学的検索 を行 な った。 その結果,知 覚過敏状態 は 露出象牙質全面 に 起 るものでな く,知 覚過敏部 は 点状 また は小帯状 (Spot or Area)を な して局在す ることを知 った。 その知 覚過敏 部 と歯髄 ・口腔粘膜 の電気抵抗値 を 測定 す ると多 くの場合15kΩ か ら50kΩ であ り,知 覚過敏 の訴 えのない象牙質露出部 の800kΩ と に明か な差 がみ られた。 象牙質知覚過敏 を訴 えるin situの 歯牙 の象牙質露 出面に 銀 イオ ン導入 を行 うと,銀 イ オ ンが歯 髄面 まで運 ばれ ている所,象 牙 質壁の 途 中までで輸送が 留 まってい る所,全 く導入 が起 らない所 が み られ た。銀イオ ンの輸送 は,そ の部位 を 流れ る電流の 大 きさに比例 し,象 牙質 の抵抗 に反 比例す るので,銀 イオ ンが 歯髄面 まで 運 ばれてい る所 は,電 気抵抗値の小 さい所,す なわち,知 覚 の鋭敏 な場所 にあた る。 この知覚過敏部位 と連 な る歯 髄面の 象牙芽細胞 には減数,消 失 がみ られ,知 覚過 敏 の訴えのない部位 には 第2象 牙 質の 添加 があ った。知 覚過敏の特徴的痛み は,こ の変化 した象牙 細管 を介 して速やか に外来刺激 が歯髄 内の 知覚神経 に 伝 わるこ とに よ り惹起 され るもの と考 え られ た。